受験シーズン到来!~”誰ひとり取り残さない受験”のかたちを目指して~「誰もが知りたいもの、必要なものを自由に手に入れ触れられる社会」の創成に向けて~3Dモデル提供体制の開発と実装~

受験シーズンをむかえます。みなさんは障がい者の受験について考えたことはありますか?

例えば、図表を用いた問題は視覚障がい者にとって大きなハードルとなります。受験にも格差があるということを考えたこともない人が多いと思いますが、実は障がいの有無などによって、そこにも見えない障壁があるのです。

国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センターRISTEXは、SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラムとして、『「誰もが知りたいもの、必要なものを自由に手に入れ触れられる社会」の創成に向けた
 3Dモデル提供体制の開発と実装』プロジェクトを推進しています。

その一環として視覚障がい者から個別にリクエストを募り、3Dプリンターで出力した造形物を送付するサービスの運用・普及などに取り組んでいるチームがあります。

研究代表は、自らも視覚障害者であり、大学入試センターで教授を務める南谷和範先生です。

まもなく受験シーズン到来!~”誰ひとり取り残さない受験”のかたちを目指して~

独立行政法人大学入試センターのデータによると、2015年~2020年の直近6年間において大学入試を志願する人数は平均569,345名となり、大学入試が身近なイベントであることが数字からもうかがえます。

50万人を超える受験生の中には障害などの理由で特別な配慮を必要とする受験生も含まれており、2020年度は111名の視覚障がい者がセンター試験を受験。

実際にセンター試験を利用した視覚障がい者に対して実施されてきた具体的な配慮としては、「点字冊子での出題と点字による解答」や「問題用紙の拡大」「解答時間の延長」などが挙げられます。必要な配慮に合わせた要望に応えることでより多くの人が受験に臨むことができる環境を整えていますが、より一層の配慮の取り組みが望まれる部分があることも事実です。

南谷先生が2019年11月から開始した、誰でも簡単につかえるユニバーサルデザイン志向の「生活者3Dプリンター」の開発と実装の研究の着想にもこうした問題意識があります。

本研究が着目する「3Dモデル」の役割

2020年度は、111名の視覚障がい者がセンター試験を受験しました。
その数は年々増加傾向にありますが、未だ配慮が十分とは言えない部分もあるのが現状です。


RISTEXが研究開発支援を行うプロジェクト『「誰もが知りたいもの、必要なものを自由に手に入れ、触れられる社会」の創成に向けた、3Dモデル提供体制の開発と実装』は、視覚障害者への情報保障、リアリティーアクセスを実現するために、ユニバーサルデザイン志向の3Dプリンタ開発とDIYの発想に基づく3Dモデルのリクエスト・出力・配信ネットワークの育成・構築を行うもの。

これにより、2030年の「自分が知りたいものをいつでもどこでも自由に手に入れ触れられる社会」実現のためのエコシステムを創出します。


研究がスタートしたきっかけは、プロジェクト発足者である南谷先生が点字で出題される試験問題を調査した際に、「点字冊子問題で使用されている、触って読む図は表現力に厳しい限界があり、晴眼者(健常者)と同様の理解度を得て問題を解くことが難しい」ということを実感したところにあります。

直感的な視覚表現の活用が進む昨今の傾向は、視覚以外の感覚活用のわい小化もはらんでいるのが現状。

とりわけ、図示表現へのアクセスがいまだ厳しく制約されている視覚障がい者に対しては、一層の情報格差を生みかねません。

この問題意識から本プロジェクトは、先立つ研究において視覚障がい者にリアリティーをもたらす模型(3Dモデル)の提供サービスの可能性を検証しています。

見えない人にとって触ることは知ることであり、確かめることですが、世の中には触って確認できないものが多く存在しているのが現状。例えば、建造物や地形、絵画などが代表的な例として挙げられますが、それらに対しリアルなイメージを抱くことを実現するために、3Dモデルは重要な役割を担っています。

教育現場においても、触察用立体教材を造形することができるようになれば、実際に触って観察することが可能となり、視覚に障害がある子どもの学習意欲の維持と学力の向上につながることが考えられます。

★まとめ 本プロジェクトの背景と概要

直感的な視覚表現の活用が進む中、視覚障がい者に対しては一層の情報格差を生みかねません。

特に、写真やグラフィックで流通している現実世界の情報を言語化することへのハードルは高く、必要な情報を細部まで入手できない可能性が危惧されています。

そこで南谷先生は、様々なモノを3D模型と音声解説で提供できるよう研究をすすめています。

研究の成果(実績)と今後の課題

■実績

南谷先生はこれまでに、シンポジウムや展示会の開催や過去200件近くの3Dモデルを提供。

さらには高知県や島根県の美術館と連携し展示品の模型を作成し触れるような仕組みづくりに取り組んでいます。

■2022年活動内容
・2月5日:シンポジウム「触って感じる美しさを探る」開催
・6月7日:日仏共同のメイカソンイベント
FABRIKARIUM TOKYO – Make the world a better place. にてプロジェクトの活動を紹介。
・6月25日:3Dモデルを一緒に楽しむ少人数ワークショップ開催
・7月23日:3Dモデルを一緒に楽しむ少人数ワークショップ開催
・8月11日:シンポジウム「わたしの3Dモデル活用術」開催
・3D模型・立体地図・触地図展示会 ※日程調整中
・7月23日~24日:視覚障害のある中高生のためのSTEM学習とコミュニティ構築の合宿「科学へジャンプ・サマーキャンプ2022」
・第10回「日本感性工学会かわいい感性デザイン賞」 最優秀賞受賞
Candeco―視覚障害者が手放せない白杖で自分らしさを追求できるプラットホーム―


【参考】 https://kawaii-award.org/award2022/%e5%84%aa%e7%a7%80%e8%b3%9e%e3%80%80%e7%ac%ac10%e5%9b%9e/

・9月23日~24日:視覚障害のある中高生のためのSTEM学習とコミュニティ構築の合宿「科学へジャンプ・サマーキャンプ2022」

・11月25日~26日:3D模型・立体地図・触地図展示会

■今後の課題

すでに視覚障がい者と3Dモデルについて、多くの研究や活動を行っている先生ですが、今後の課題として下記3点を挙げています。


1. 元となる3Dデータを作成することができず、限られた模型の提供となっている⇒フリーの3Dデータ数を増量。さらに、それらを誰もが入手できるプラットホームづくりの実現

2.3Dプリンタで立体造形物を出力するには、多くの工数と知識を要する
⇒視覚障害者が自分の家庭や職場で出力できるよう、既存の3Dプリンターを誰でも操作可能な形に改良(「生活者3Dプリンター」実現の一環)


3.プロジェクト単位だと大多数の(必要としている)人に行き届かない可能性がある
⇒全国規模の組織に引き継いでいく仕組みづくりの実施

★まとめ 現状と課題

3Dモデルは視覚障害者のみならず晴眼者にとっても(円形だと思っていた建造物が楕円形をしていたなど)有意義な気づきを与える。

“誰もが”という理念のもと、3Dモデルの製造から提供までを実現する仕組みの実装が始まっていますが、一方で技術的な面や仕組み的な面での課題も明確となり、2030年の全国実装を目指し研究を進める。

― RISTEXについて―

科学技術振興機構社会技術研究センター RISTEX は、 SDGs を含む社会の具体的な問題の解決や新たな科学技術に関して生じる倫理的・法制度的・社会的課題への対応を通して、新しい価値の創出を目指しています。

研究者と社会の問題解決に取り組む「関与者」が協働するためのネットワーク構築を支援し、自然科学および人文・社会科学の知識を活用した研究開発等に取り組んでいます。

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